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弓道の射形の原因をAIで特定する方法 Gemini×Claude×ChatGPTで"なぜ"を解く解析手順

弓道の射形の原因をAIで特定する方法
第3回 / 全3回

弓道の射形の原因をAIで特定する方法
Gemini×Claude×ChatGPTで"なぜ"を解く解析手順

射形の問題は「症状」としては見える。
離れで弓手が落ちる。妻手が前に出る。会が保てない。

しかし「なぜそうなっているか」まで辿り着けることは少ない。指導者に指摘されても「わかった気がするけど改善しない」という経験はないだろうか。意識して直そうとすると、今度は別の場所がおかしくなる——これが射形の厄介さだ。

第1回「弓道の射形をAIで解析するための撮影方法|カメラ位置で精度が9割変わる」では素材の作り方を、第2回「弓道の射形をAIで解析する方法|ChatGPT・Claude・Gemini、3つの役割と使い分け」では3つのAIの役割と使い分けを解説した。第3回では、道場仲間のLinさんの体験を通じて、Gemini×Claude×ChatGPTを連携させた「精密解析フロー」をご紹介する。

Linさんの相談——「離れで妻手が前に出てしまう」

Linさんは弓道歴7年。現在は四段受審中だ。

離れで妻手が前に出てしまう「前離れ」に長年悩んでいる。指導者から何度か指摘されていたが、意識すると別の場所がおかしくなる——という状態が続いていた。

自分がAI解析をやっていると話したところ、相談を持ちかけてきた。そこで、まずは動画を一緒に見ることにした。

Step 0:AIの前に、人間の目で見る

AIに渡す前に、まず自分の目で見る。これは第1回でも強調したことだ。

真横と斜め前の動画を一緒に見て、気になったことをそのまま伝えた。

「大三で妻手の上腕骨が外旋していない。肘頭が後ろに向かず、肘が前方に残ったまま引き分けに入っている。離れで肘が後ろ下に逃げる余地がないため、妻手が前に出ざるを得ない構造になっているのではないか」

上腕骨を外旋させることで、肘頭が後方に向き、引き分けの軌道が体の後ろ側に乗りやすくなる。肘が後ろへ通る道ができれば、妻手は前に出なくて済む。

しばらくは「上腕骨の外旋」を意識して稽古することになり、AI解析は次回に持ち越しとなった。

修正の手応えと新しい問題

数日後、Linさんから報告が来た。

「妻手はスパッと抜けるようになった。弓の中にも入れるようになって、狙いがはっきりと見える。でも今度は離れで弓手が落ちる」

上腕骨の外旋を意識したことで、妻手の前離れはほぼ解消された。さらに「弓の中に入れる」という感覚——目線と矢線が近づき、狙いがはっきりと見える——は、思わぬ副産物だったという。

しかし弓手の落下という新しい症状が出てきた。

「直したら別がおかしくなった」——これは射形あるあるだ。問題が連鎖しているとき、一か所を直すと別の場所に負荷が移る。直った場所と壊れた場所は、同じ原因で繋がっていることが多い。

ここで精密解析フローの出番になった。

二段階解析フローの全体像

【素材準備】 動画(Gemini用) +射法八節の代表フレーム・問題箇所の精密フレーム(Claude用静止画) ↓ Step 1 【Gemini:データ抽出フェーズ】 動画+専用プロンプトを渡す 出力:関節座標の変位データ(CSV) ↓ Step 2 【Claude:仮説立案フェーズ】 GeminiのCSVデータ+静止画を渡す 指示:「離れで弓手が落ちる問題の原因を探り、改善案を示してほしい」 出力:骨格・重心・筋張力の連鎖仮説 ↓ Step 3 【ChatGPT:仮説検証フェーズ】 Claudeの仮説+動画を渡す 指示:「この仮説を動画と照合し、検証してほしい」 出力:補正・追加視点・次のテーマ ↓ 【解析完了・稽古テーマの設定】

Step 1:Geminiで関節の変位を計測する

このフローでGeminiに求めるのは「観察」ではなく「計測」だ。

通常のLLMに動画を渡すと、「肩が上がっているように見える」「肘の位置が気になる」という自然言語の観察が返ってくる。それ自体は有用だが、フレーム間の変化量を追うには数値が欲しい。

そこで、以下のプロンプトを使用してGeminiで関節など任意のポイントの変位を計測する。

📋 Gemini計測プロンプト(抜粋)
# 役割
弓道射形解析のデータ抽出プロセッサ。
動画とタイムポイントデータに基づき、
指定のフォーマットでCSVデータのみを出力する。
分析・評価・コーチング・挨拶・雑談は一切行わない。

# 計測定義(主要項目)
- 両肩峰のY座標変位(T1:打起し完了を基準)
- 左右腕の肩峰→肘→手首の角度
- 肩ラインと腸骨ラインの角度差(体幹回旋の近似)
- 胸骨のX座標変位(前傾の指標)
- 離れ前後(T6a〜T7)の弓手拳・肘の変位量

# 出力ルール
出力はCSV形式のみ。前置き・コメント・説明は一切不要。

このプロンプトのキモは、Geminiの役割を「計測器」に固定して、評価を禁じることだ。数値の抽出と解釈を分離する——これがフロー全体の精度を上げる。

出力されるCSVには、打起しから残心まで各タイムポイントの関節変位データが並ぶ。これをそのまま次のステップでClaudeに渡す。数値が何を意味するかを自分で読み解く必要はない。Claudeがそれをやってくれる。それが、このフローの利点だ。

Step 2:ClaudeでCSVデータを構造化する

GeminiのCSVデータと精密フレームの静止画をセットでClaudeに渡す。

📋 Claude精密解析プロンプト
以下は弓道射形解析の計測データ(CSV)です。
[GeminiのCSV出力をここに貼る]

この数値データと添付の静止画(会〜離れ直後の精密フレーム)を
合わせて解析してください。

【解決したい課題】
離れで弓手が落ちる問題の原因を探り、改善案を示してほしい

【確認したいこと】
会の前にすでに構造的な問題が形成されていた結果の現象かどうかも
含めて整理してほしい

【前提情報】
・妻手の前離れが出ていたため、大三での上腕骨外旋を意識するようにした
・妻手は改善したが、離れで弓手が落ちるようになった

推測が含まれる場合は明示すること。

数値データと静止画を組み合わせることで、Claudeは「何が起きているか」を視覚的に確認しながら、「いつから起きていたか」を数値で追うことができる。

Linさんのケースでは、以下の仮説が返ってきた。

【現象】 離れで弓手拳が下方に落ちる。 会直前にも弓手肘のわずかな屈曲が見られる。 【直接原因(仮説)】 妻手は能動的な指向性(矢筋に抜く)を持って動いているのに対し、 弓手は肘から先が構造に参加していない状態になっている。 離れの反動が来た時に受け止める構造の終点がなく、 肘・拳が逃げ場になっている。 【根本原因(仮説)】 大三の時点で弓手の腋窩が閉じたまま完成している。 上腕骨を外旋させる意識は良いが、上腕骨単体の回転にとどまっており、 肩甲骨と連動していない可能性がある。 腋窩が閉じたまま引き分けに入ると、胸郭が押しつぶされ、 肩甲骨が外転しすぎて背中の力が上腕中ほどで止まる。 結果として肘から先が浮いた状態になる。 いずれも仮説であり、身体での確認が必要です。

ここで一つのことが見えてきた。「妻手を直したら弓手が落ちた」という二つの症状、その根本にあるのは同じ構造——腋窩が使えていない――かもしれない。

弓手側の腋窩が閉じていれば、背中の力が肘まで届かない。妻手側の腋窩が閉じていれば、肘の抜け道が塞がれて前離れになる。今回Linさんが「上腕骨を外旋させた」ことで妻手側の肘の通路が開き、前離れは解消された。しかし弓手側の腋窩はまだ閉じたままだった——というのがClaudeの読みだ。

Step 3:ChatGPTで仮説を検証する

Claudeの仮説が出たところで、一度立ち止まる。「この仮説、本当に正しいか?」

ここでChatGPTを検証役として使う。Claudeの仮説のテキストに加え、今回は動画も読めたため動画ごと渡した。

📋 ChatGPT仮説検証プロンプト
以下は弓道の射形解析で立てられた仮説です:
[Claudeの出力を貼る]

この仮説を動画と照合し、検証を行なってください。
仮説の問題点や見落とし、反証となりうる観察があれば、
優先的に報告してください。

返ってきた指摘は、仮説を否定するものではなかった。しかし重要な補正と、次のテーマが加わった。

表現の補正

「『弓手が反動を受け止められていない』という表現は半分正しく、半分ズレています。弓道の離れでは、弓手は反動を止めるのではなく、弓の復元力を骨格に通して流す必要があります。問題は弓手が弱いことではなく、肩甲骨→上腕骨→肘→前腕→手の内のラインが、離れの瞬間に一本化されていないことです」

弓手と妻手、腋窩の働きの違い

「弓手と妻手では腋窩の役割が違います。弓手は弓の復元力を押し通す側——腋窩後壁から張れると、肩が前へ詰まらず、肘まで張力が通る。妻手は肘が後ろへ通る側——腋窩後壁から張れると、肩が前へ巻き込まれず、肘の抜け道ができる。今回の前傾で妻手が『スパッと飛んだ』のは、体幹が弓の中へ入ったことで妻手肩前面の詰まりが減り、腋窩後壁側へスペースができたからではないか」

共通項と次のテーマ

「弓手・妻手に共通しているのは、肩の前面を使わないこと。大胸筋前面で頑張らない、肩を前へ滑らせない——その代わりに、腋窩後壁・広背筋ラインから腕を遠くへ保つ。胸骨が矢線へ入ったのは良い変化。しかし弓手肩が一緒に前へ入りすぎる瞬間がまだある。次のテーマは『胸は入るのに、肩を潰さず残せるか』です」

「直したら別がおかしくなった」という感覚は、実は上達のサインかもしれない。問題が連鎖しているとき、表面の症状を直すと次の層が見えてくる。Linさんは今、妻手の前離れという表層から、腋窩の構造という根本へ、そして「胸が入っても肩を残せるか」という次の問いへと、一段ずつ降りてきている。

仮説を持って道場へ

Linさんは次の稽古で、一つだけ試すことにしたという。

「大三で上腕骨を外旋させる前に、腋窩の奥の空間を保つ一拍を入れる」

劇的な改善を求めない。まず身体が「腋窩が参加した状態」を記憶できるかどうか——それだけを確かめる稽古だ。

AIが出したのは仮説だ。どのAIが何を言ったかより、その仮説が自分の身体感覚と一致するかどうかを問うこと——それが解析の価値を決める。

このフローで何が変わるか

3回にわたって弓道のAI解析を解説してきた。

Linさんの体験を振り返ると、一つの構造が見える。

妻手が前に出る → 上腕骨の外旋で改善 → 弓手が落ちる
→ 腋窩が閉じていた → 胸が入っても肩を残せるか

症状は次の症状へ繋がっていた。しかし「繋がっている」とわかるためには、一段深く掘り下げる必要があった。その掘り下げを可能にしたのが、3つのAIの役割分担だ。

Geminiは計測器として数値を抽出する。Claudeはその数値と静止画を骨格の連鎖として構造化する。ChatGPTは仮説を動画と照合し、言葉の精度を上げ、次のテーマを示す。どれが最強かではなく、何のために使うかで選ぶ。

AIが出すのはあくまで「仮説」だ。その仮説を持って稽古に臨み、身体で確認し、指導者に相談する——このサイクルの中にAIを置くのが、正しい使い方だと感じている。

AIに頼りきるのではなく、AIを問いを深めるための道具として使う——これが3回を通じて伝えたかったことだ。

気づきが増えると同時に、また別の問いが生まれてくる。それ自体が、上達の証だとLinさんは話していた。

その問いを持って、道場へ向かってほしい。

今すぐできること(第3回)

  1. 自分の「症状」を一つ言語化する(例:「離れで妻手が下がる」)
  2. その症状について「なぜ起きているか」を自分なりに一つ仮説を立てる
  3. Geminiに動画を渡して計測データを出力させる
  4. そのデータと静止画をClaudeに渡し、「この問題の原因はどこにあるか」と問う
  5. 出てきた仮説をChatGPTに動画ごと渡して照合・検証させる

仮説なしに投げるのと、仮説を持って投げるのでは、返ってくる答えの質が全く違う。

本シリーズ全3回はこれで完結です。

Geminiの計測プロンプト詳細設計、ClaudeのスキルによるAI解析環境の構築については、続けて解説していく予定です。

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